清左衛門地極池
清左衛門地極池

清左衛門地極池

平成の名水百選は、全国で162箇所の中から100箇所が選定され、神奈川県では唯一南足柄市狩野にある「清左衛門地獄池」が選定されました。南足柄市は湧水がたくさん湧出する地で、箱根外輪山東山麓に、湧水群や自噴井戸が広がっています。この地域を代表するのが良質で豊富な水量を有する「清左衛門地獄池」の湧水で主に工業用水(⑦の画像が富士フイルムの揚水ポンプです)として使用されています。この湧水池の回りにはには、厳島神社、弁財寺、湧水を活用した幸運の滝、東屋等が整備されています。また、四季折々の花が楽しめる親水公園として整備されています。

清左衛門地獄池の伝説

 昔、清左衛門という人がよい水源をさがしにここまで来ますと乗っていた馬もろとも地中深く落ち込んでしまいました。そしてそこから勢いよくたくさんの水が湧き出してきました。それからは土地の人々が行って「清左衛門」「清左衛門」と呼ぶと、いっそう勢いよく水が湧き出してきました。これはこの池に伝わる伝説ですが、この話からも昔から農民たちがいかにたくさんのよい水を欲しがっていたかがわかります。清左衛門という人は昔からあった池を改修して常時たくさんの水を貯められるようにしたか、または池の開発のために犠牲になったのか、あるいはこの地方の有力者であって農民たちのために水利権を守ったのかもしれません。また苅野には昔から加藤氏という有力者がいましたので清左衛門を加藤氏と結びつける人もいます。いずれにしても、この近くの富士フイルム社宅の敷地から5~6000年も前の縄文時代の人々の住居跡が発見されたことがすでにここによい池があり人が生活していたことの証拠になります。
池の前に設置してある看板より

豊かな水で本市発展に寄与湧き出る水は1日に1.3万トン

 清左衛門地獄池は箱根火山の外輪山である明神ヶ岳を水源とし、1日に1・3万トンの地下水が湧き出しています。現在は富士フイルムの第二水源地として、工業用水としても利用されています。
また周辺にはいくつか「浮気」と呼ばれる湧き水が存在します。近くには馬場遺跡という縄文時代の遺跡があることから、この地は昔から水が豊富で人が住んでいた場所と考えられます。池の中の島には厳島神社が、 池の畔には弁財寺が建てられています。弁財寺は江戸時代初期、箱根塔ノ沢にある阿弥陀寺の開祖である弾誓上人が開山したと 伝えられています。 昭和19年には本堂が焼失し、住職も不在となっていたことから廃寺となってしまいました。その後、地域住民の手によって本堂が再建され、平成2年には宗教法人として認証されました。現在でもこのお寺や池は、近隣住民の手により整備され、美しい環境が保たれています。

多くの水を貯える成層火山「明神ヶ岳」

 この湧き水の源である明神ヶ岳は、27〜23万年前に活動していた成層火山であることがわかっています。本来の山頂はもう少し南側にあり、標高も高かったのですが、カルデラが形成された23万年前以降の大規模噴火により山頂部分が崩壊し、現在の形になりました。成層火山とは何度も噴火を繰り返し、溶岩と火山灰などの噴出物が交互に積み重なった円すい状の山で、代表的な山としては富士火山が知られています。ちょうど火山噴出物がスポンジのような役割をし、ビルの貯水タンクのように高いところに多くの水を蓄えることができるため、麓では水が豊富に湧き出すのです。箱根は全国平均のおよそ2倍の降水量があるため、その麓の本市も豊かな地下水に恵まれています。この水を求めて富士フイルムをはじめとした企業が進出してきたことが、本市発展の礎となりました。そして箱根火山からの地下水は、市営水道として飲み水にも使われるだけでなく、地表に湧き出して田畑にも利用されているのです。火山というと噴火などの災害ばかりに目が行きがちですが、一方で私たちは水という恩恵を受けています。 清左衞門地獄池は、火山による恵みを学ぶことができるジオサイトなのです。

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