矢倉岳
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矢倉岳

 矢倉岳の山頂付近にある岩石はマグマが冷えて固まってできたものですが、矢倉岳は火山ではありません。地下深くでできたマグマが地表に吹き出す現象が火山噴火で、噴出したマグマが地表で冷え固まってできたものが溶岩です。マグマが冷えて固まった岩石を火成岩といいますが、溶岩を含め、マグマが地上付近で急速に冷えて固まってできる火成岩を火山岩といいます。これに対して、地下深くでゆっくりと冷え固まってできた岩石を深成岩といいます。
神奈川県には有名な深成岩体二つあります。一つは丹沢山地の中心部に分布する深成岩体で、もう一つが矢倉岳です。なぜ矢倉岳が有名なのか、それはその生い立ちが関係しています。矢倉岳の山頂付近は深成岩体ですが、周辺の地質は足柄層群と呼ばれる地層でできています。
足柄層群は、約200万~ 万年前に伊豆と本州の間にあった海に、泥や砂、レキが堆積してできた地層です。この足柄層群ができていく過程で、およそ170万~120万年前にできた地層に、その直後の115万年前にマグマが入り込んでゆっくりと冷え固まり、後に矢倉岳となる岩体ができました。できた岩石の種類は、石英閃緑岩と呼ばれる深成岩の一種です。115万年前に深成岩体ができたことはそう珍しくはありません。世界的に見ても珍しいのは、115万年前にできた岩体が、既に地表に露出している点にあります。現在の矢倉岳は標高870メートルの山です。矢倉岳は地下の深いところでできた深成岩体が、115万年の間に870メートルまで隆起したことを示す重要なジオサイト候補地と言えます。
 矢倉岳を含む足柄山地はこのように急速な隆起をしますが、同時に侵食を受けます。深成岩体のまわりの足柄層群は、堆積岩のために比較的軟らかいので、より侵食された結果、深成岩体の部分が取り残され、現在のような矢倉岳の姿になったのです。 矢倉沢から矢倉岳にかけての登山ルートで、植林の針葉樹林帯を抜けた標高600メートル付近から傾斜が緩くなります。その後、630メートル付近から一気に傾斜がきつくなります。そこから深成岩体が露出するためで、よく足元の石を観察すると、ごま塩模様の石英閃緑岩を見ることができます。矢倉岳を登山する際、地層に気を付けながら登れば、きつい傾斜も少しは楽に登れるかもしれませんね。

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